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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)48号 判決 1982年2月24日

控訴人(原告) 日拓ホーム株式会社

被控訴人(被告) 市川市長 市川市

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。控訴人の原判決物件目録(後記訂正あり)記載の土地に対する昭和四八年度から同五二年度までの特別土地保有税の減額更正請求及び納税済額の還付請求につき、被控訴人市川市長が控訴人に対し昭和五二年一一月二八日付でなした更正及び還付をすべき理由がない旨の通知処分は、これを取消す。被控訴人市川市は、控訴人に対し金三〇九九万七二一〇円及びこれに対する昭和五二年一一月一二日以降完済まで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一・二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び右金員給付の部分につき仮執行の宣言を求め、被控訴人ら代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張は、次に掲げるほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の訂正

1  同判決物件目録(A)の所在地名6の行の地番「1212」を「1612」と改める。

2  同判決四丁裏九行目・八丁表末行・一一丁表四行目・一二丁裏九行目と一一行目に「標準」とあるをすべて「対象」と改める。

3  同五丁表九行目・六丁表九行目に「課税標準」とあるをいずれも「免税点」と改める。

二  当審における主張

(控訴人)

1  土地区画整理事業(以下「整理事業」という。)の施行地区内にある土地の取得及び保有に対する特別土地保有税(以下「保有税」という。)の免税点(地方税法(以下「法」という。)五九五条二号の基準面積)については、保有税と性格の類似する固定資産税に関する法三四三条六項を類推適用し、原則として仮換地の面積によるべきであり、従前地の面積によるべきではない。

2  ところで、控訴人が本件土地を購入した当時は、整理事業のさなかであつて、土地区画整理法(以下「整理法」という。)七六条による規制があるのみならず、現実にも隣接地との境界さえ定かでなく使用収益できない状態であつたが、仮換地指定後においても、その使用収益開始の日がくるまでは従前地のみでなく仮換地をも使用収益することができない(整理法九九条)のであるから、控訴人にとつて、本件土地を購入することは、実質的にみて宅地造成後使用収益が可能となつた仮換地を買うことにほかならない。そして、右仮換地の面積は、整理事業による減歩の結果、購入時において保有税の基準面積を下廻ることが確実視されていたのであるから、本件において、一で述べた法三四三条六項を類推適用するに際し、仮換地の使用収益開始日を基準とすべきものではない。

3  したがつて、本件土地の面積は、税法上の評価として、購入当初又は遅くとも仮換地の指定以降保有税の基準面積未満であつたと認めるのが相当である。

(被控訴人ら)

右控訴人の主張は、争う。保有税と固定資産税とでは、税の性格が異なるし、元来税法規の類推適用は許されないものであるから、法三四三条六項の規定を保有税の免税点の判断の資料とすることはできない。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求はすべて理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は、次に掲げるほかは原判決理由説示と同じであるから、これを引用する。

(原判決理由の訂正)

1  原判決一五丁裏八行目「課税標準」を「免税点」と改める。

2  同一六丁表末行「仮換地」の次に「指定」を加える。

3  同丁裏三行目「以下」を「未満」と改める。

4  同一八丁裏五行目「昭和」以下六行目「すると、」までを削除する。

5  同一九丁表末行「政策」の前に「前叙の」を加える。

6  同一九丁裏につき、二行目「のである」を「ものと考えられる」と改め、一〇行目「法五八五条六項」を「当初の法五八五条五項、その後昭和五〇年法律第一八号の改正により同条六項に繰り下げられた。」と改める。

7  同二〇丁表九行目「課税する」を「課税しうる」と改める。

8  同二一丁表につき、一行目「原告」の前に「なお、」を加え、一一行目「成立に争いのない」を「官署作成部分につき成立に争いがなく、その余の部分につき弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認める」と改める。

9  同二二丁表につき、一〇行目「メートル」の次に「で免税点を越えるもの」を加え、同行目「ことは」以下一一行目「税額に」までを「ことには」と改める。

(当審における控訴人の主張について)

控訴人は、本件につき固定資産税に関する法三四三条六項の規定を類推適用すべきであると主張する。しかしながら、保有税は、投機的な土地取得の抑制と宅地供給の促進を目的とする政策税であつて、固定資産税とは性格を異にするものであるから、法五八五条六項のごとく明示の準用規定がない限り固定資産税の規定を保有税に類推適用すべきではない。また、控訴人は、本件土地の購入につき、実質的には使用収益の可能な仮換地を購入したものである旨主張するが、かりに経済的な意図がそうであつたとしても、右購入時には未だ仮換地の指定がなく、法律的にはあくまでも従前地の売買なのであつて、その後に仮換地の指定がなされてもその故に、仮換地の所有権を取得するものではない。したがつて、仮換地の基準面積を下廻ることが本件土地購入時に予測されていたとしても、特段の定めがない以上は法五八五条一項の原則に従い、保有税の免税点について所有権の対象たる従前地の面積によるべきであり、仮換地の面積によるべきではない。

よつて、当審における控訴人の主張は、採用できない。

二  以上の次第で、原判決は相当であるから、本件控訴を失当として棄却すべく、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鰍澤健三 野崎幸雄 佐藤邦夫)

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